南平台日吉台線 一方通行自転車道についての雑感

 大阪の高槻市、自転車道の整備された路線「南平台日吉台線」のレポートに続く雑感です。

 丁字の交差点、構造分離(=縁石)が途切れなければならない根拠は? この停止線は守らないといけない?

 

 路線内にもう1ヶ所ある交差点、こちらには交差点内に矢羽根が描かれている。同じ路線内で矢羽根が描かれたり書かれなかったりしているのは何故かと以前高槻署に問い合わせたが明確な答えは得られなかった。「(西寄りの方は)丁字交差点だというのと関係しているかも…」と応対に出られた方は言っていた。

 

 自転車道内のガードレール。主に斜度の大きい路線西半部の、北側にのみ設置されているのは下りでスピードが出やすいのを懸念してのことだろうか。ただし、幅員の調整がないので、ガードレールの張り出した分だけ自転車道の幅員はロスに(約25cm減でW≒1.75m)。速度の増大が視野狭窄を招くのは自転車でも同じ。安全対策(ガードレール設置)が走行の危険性を増すことになっては本末転倒では。日本のこうした道路付属物の配置に見られる自転車の走行性の看過はここでも繰り返されています。 

 またしかし、自転車の逸脱を懸念したものだとしたら、ガードレールは過剰な設備。見たところ、レールよりも支柱が走路側に出ており、もし接触したならと想像するだに恐ろしい凶器的構造物。つい自転車の速度を懸念した設備と思ってしまったが、ガードレールは対車の設備なのだろう。いずれにしても、その為に自転車の幅員(と視覚的不安感の増大)が割をくうのはやはり理不尽です。 

 

 広漠たる歩道空間(路線東端の交差点から西方向)。ぜひProtected Intersewctionへの改修を。

 

  東端部のこうした形状は、自転車道への利用者の導入に確実に影響していると思われます。

 

 自転車の沿道利用の利便性が看過されている。バリアフリー法との摺り合わせって、議題にあがっているだろうか。

 

 この標識には公安委のシールが貼られてありますが、

 こっちにはないのは何で? 高槻署に問い合わせるもはっきりとした返事は得られず。

 

 ラクラク並走できる自転車道を! 

 

 南平台日吉台線の西側に続く市道。放置される旧型の自転車道 

  整備キボンヌ 

 

  既成市街地ではなく、法面や擁壁に多く接している開削でできた南平台日吉台線。一方通行型での整備は高槻市の意欲の現れではあるのですが、例えば双方向・片側集約式も選択肢としてありだったのではないか。

 その場合、自転車部の幅員は2X2=4mではなく、そのうち0.5mでも緩衝帯に宛てていれば、クルマとの離隔が増して利用者の安心感を向上させ、また例えばガードレールを自転車道部分の幅員をロスせず設置することもできたかと。

 

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南平台日吉台線 未だ未知数の一方通行自転車道

 大阪の高槻市、自転車道の整備された路線「南平台日吉台線」のレポートです。

 

 3年前の3月に開通した新路線(自転車道は少し遅れて翌年5月からの供用)。高槻市の整備になる路線です。 

  この自転車道は、幅広の歩道の一部を中途半端に分離したタイプ(規定上は歩道)ではない正規の(と言うのもヘンですが)自転車道です。

 

『都市計画道路南平台日吉台線 事業概要資料』(高槻市) より抜粋・ハッチング
『都市計画道路南平台日吉台線 事業概要資料』(高槻市) より抜粋・ハッチング

 またこの自転車道は、車道両サイドの自転車専用部分の進行方向を一方向とする、一方通行の規制を導入した自転車道で、この自転車道の大きな特徴となっています。

 

 海外では自転車道が一方通行だというのは珍しくないのですが、日本ではこれまで自転車道はほぼ全てと言ってよいほど双方向(かつ車道の両側に設置)の形で整備されてきたので、これはとても貴重な例となります。

↑ 一方通行自転車道の例 コペンハーゲン、Nørrebro地区

↑ 一方通行自転車道の例 ニューヨーク、マンハッタン

 

  自転車道の形式には、一方通行と双方向の良否をめぐる議論があります(※1)。しかしここではそれを云々する所まではあまり踏み込めません(最後の方で少し書きます)。

  そもそも日本ではまだ例の少ない片側通行の自転車道。果たしてそれは日本でも可能なのか、どの程度利用者に認知され機能するのだろうか、というのがさしあたっての関心のポイントです。   


 さてもとより更新放置常習の当ブログですが、それでもこの全国的にも希少な一方通行の自転車道(自転車のインフラ投資には極めて冷淡な大阪においてはなおさら貴重な)をとりあげるのに、供用開始からおよそ3年もかかったのには理由があって、それはビヘイビアを評価するのが躊躇われるほど低調な利用状況でした。 

 自転車道の開通から約半年経った12月の或る平日、利用台数を数えてみたところ、以下のような結果。

15:15~15:25  →  3台

15:25~15:35  →  2台

 寒さと張り合いのなさで意欲が萎え、20分でカウントをギブアップしてしまったのでした。歩行者の方も数えてはなかったですが似たような数か、或いは自転車よりも少なかったかもしれません。  

 「南平台日吉台線」は、もともと新設の高速道路「新名神高速」への接続道路として計画された道。つまり、主にクルマのニーズを基にした道で、その用地も丘を削って確保されたため高低差もあり、沿道も多くの部分が法面と擁壁になっています。地元住民の生活利便には必ずしも直結しない道なのです。

 

 ついては、時を経ていくらかなりとも生活への定着が進む(利用増)のをせいぜい期待して、翌年、翌々年と計測を続けたという次第。

 

   本線開通時(2017年)の南平台日吉台線 


 というわけで前振りが長くなりましたが、供用開始以来3度目にしてようやく一定数の利用数を得た(と勝手に判断した)計測による、自転車道ビヘイビアの観察レポートです。

 

  下は3回の計測をまとめた表。初年の第1回目は1時間換算で15台だったのが、翌年の2回目は18台、3回目の今年で25台に。今もって盛況とは言い難いものの、結果としては増加傾向。自転車道の利用数でもようやく2ケタのサンプルを得ることができました。  

 

 計測のあらましを説明しておきます。

 

 路線の中間やや東寄りにある交差点で実施。下は「ココ」付近の拡大図。  

 A-A´もしくはB-B´どちらかを通過する自転車をカウント(重複は目視で回避)。カウントは台数単位(≠乗員数)。交差点でサイドを変更してもカウントは1。歩道走行(歩道には逆走の観点はない)についても順走・逆走の別を記録。途中で走行位置をシフトした場合、記録は最初に通過したラインでの位置とし、シフト後の位置をメモ記載(※2)。いずれも平日の、午後3~4時前後(学生の下校を期待)を狙って実施。 

  しかし、増えたとはいえ、実行した月も異なり、最大でも1時間という短い計測時間。残念ながら結果数字はあくまで一つの参考値というものなのでしょう。 

 まあ3回目に至ってようやく計測時間60分とは、実施者の根性なしぶりが露呈しています。ただこれは言い訳になりますが、仮にもっと時間がとれたとしても、個人での観察は時間が増すほど諸々のリスクも増します。 

 

 測定ポイント付近

 

 以上を踏まえたうえで(気を取り直して)、数字を見てゆきます。

〇通行台数 

 

 通行台数は、先に書いたとおり、計測の上では増加傾向ですた。月日を経て住民の認知が進んだ、 また路線の西端にできたマクドナルドなど店舗出店の影響も念頭に置きつつ、あくまで結果数字だというのに留めます。サンプルの絶対量と計測時間が各回とも違っていることを鑑みるに、特に時系列の評価については慎重であらねばなりません。

 

〇自転車道の利用率 

 

 時系列の評価は慎重たるべしと書いたばかりですが、6割台で推移という概ね一定の数字が出たのには留意したい。ではこの数字は高いのか低いのか。

 

 例えば5mもの幅員を有する万博公園の外周道路(一部3.5m)ですら歩道を通る利用者は普通に見かけるし、2m幅の双方向でありながら概ね自転車道に利用が集まっている所もあります。自転車道は設置さえすれば利用されるというものではなく、接続する道路との処理や民地、地域の利用ニーズなど様々な要素との関連が問われるインフラです(矢羽根も専用レーンも然りですが)。

 

 とはいえ当方はここの他に一方通行の自転車道の見聞がなく、結局高いとも低いとも言いいようがない。なお、計測の限りでは車道走行は見られず。自転車道以外の利用は全て歩道通行となります。

 

〇自転車道の順走・逆走率

 

 気になっていた順送・逆走の値。第1回目の順送率100%(=逆走ゼロ)はたった5台という小サンプル数に鑑みて評価からは外して、その後の経過は第2回で87.5%、3回目で81.3%へ下落という結果。

 

 落ちたというよりも、8割あたりへ定着しつつあるのか。これも高いとも低いとも言いようのない数字ですが、感覚的には低くない数字のように思います。片側通行というしばりのもと、また利用台数増という下振れ要因を含みながらなお8割以上の順走(遵守)率を保持したのはむしろ健闘では。

 

 書かずもがなかもしれないですが、同一条件(一方通行自転車道)の比較データがないので、どの観点についても断定的な評価は憚られます。

 

 下は第3回計測分を順送・逆走について男女別にまとめてみたもの。 

 

 男女別では大きな差異が出ていました。

 

 大雑把に見て、利用者のメインは児童・学生と主婦(というか成人女性)。女性優勢の構成は後者によると理解します。そしてこの主婦層が意外にも、と言ってはなんですが遵法的だったように思います。一方で小学生ぐらいの子らが歩道を並走する光景など記憶に残ります。

 最後に、計測のなかで気になった事象を示しておきます。交差点を通過(A⇄B)する際、走行位置をシフト(移行)した例です。これらのビヘビアは、高い(と私は思っている)順走率をある意味補足しているるかのようにも思えます。例は3件、下はその経路を示した図です。 

・例1 自転車道を逆走していたのが、交差点で道路を横断してサイドを変え、自転車道を順方向に進む位置に移行。

・例2 自転車道を逆走していたのが、交差点で直進しつつ歩道へ移行。

・例3 歩道を逆走していたのが、交差点で道路を横断して自転車道へ入り、「順」方向へ進む位置へ移行。

 

 例2は、自転車道から外れてしまった例ですが、自転車道の逆送という「違法」状態から、逆走を問われない位置(歩道)へ脱した行為とみることもできます。言い方は大げさになりますが、3例とも、非正規の状態から正規の状態への移行を果たした動きだったと見ることができます。

 たまたま、だったのかもしれないですが、何だか面白い結果だと思います。

 

 ちなみに、これらの走行位置を移行したケースを補正してみると、8割台だった順走率は93.8%と、9割を越える結果になります。 

 

 以上見てきて、さて南平台日吉台線は機能しているのか。

 

 当方の主観・印象を含んだ感想ですが、南平台日吉台線の自転車利用者は、この道路の自転車道が片側通行であることをよく弁えて利用してるのだろうと思います。

 

 自分の進みたい方向が、自身の置かれたサイドの方向と違っている(逆走になる)場合、自転車道を通らず歩道を選択していると。「面倒だな」と思いながらも(思っているとは限らないでしょうが)、自分の意図する方向とサイドが合っていなければ歩道へ、合っていれば自転車道へ進むという、そんな使い分けを習得しているように思えます。例えば第2回から第3回にかけて歩道の「逆走」率が上がっているのなど、むしろ理解が進んだ結果なのかも、と思ったりもします。

 

 ただ、もしそうなのだとすると、この自転車道における一方通行の遵守度は歩道の存在によって成り立っている、ということになります。もっと言えばけっきょくのところ、利用者は道路を双方向的に利用している、ということになるでしょうか。南平台日吉台線は幸いにも一定幅の歩道があり、歩行者・自転者の数も少なくスペース的に余裕があるので、問題は表面化せずに済んでいるのかもしれず、もっと利用者の多い道だったなら、やはり歩行者と自転者の錯綜が問題化したのかもしれません。

 

 ツーリングやスポーツなどと違って、生活用途の短距離利用が圧倒的な日本の自転車利用では、進む方向によって道のサイドを選択することへの強い抵抗感が潜在します。国は、技術的問題を掲げて双方向の自転車道整備を遠ざけていますが、そうして国民のニーズの強い双方向型自転車道の整備を避けてはせっかくの自転車専用インフラはいつまでたっても不完全なままではないだろうか。海外の近年の自転車道など、双方向型を積極的に採用する例が目立つように思います。

 

 南西側には進行中の宅地開発もあり。引き続き利用増を期待しつつ、懲りずにまた計測やるかもです。

高槻市様、もし計測実施していたなら資料公開よろしくお願いします。


※1 国は一方通行を推奨していて双方向での整備には消極的(『安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン』)。「双方向」型の擁護は主に自転車に関心の高い一般市民からなされている。しかし国のこの一方通行推奨の姿勢は、もしかすると自転車道整備を不活発にしている要因かも。

 

※2 AとBは別地点とされるものなのでしょうが、2地点をいわば一体とみなしたイメージで計測を行っていました。A-B、A´-B´間の重複のskipも実際の通行数レベルから問題にはならず、一方で2箇所設定だと単独での記録作業に不安があった等からこのやり方で通しました。もとより専門家の指導を受けたものではなく、なりゆきで進めたやり方です。ご覧くださった方でお詳しい方おられましたら、改善の余地などもしありましたらご教示いただければ幸いです。

 

※3 市の方でもし計測を実施しておられればそれはそれでいいのですが。いずれにせよ今年が該当年になっている『たかつき自転車まちづくり実行計画』の中間見直しが非公開(庁内での検討・策定)だというのはとても残念なことです

 

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啓発動画の放映はじめました

 一年ぶりの更新は告知記事になります。

日常生活で自転車を利用する一般の方々に向けたシリーズの動画です。当方のオリジナルです。 

1編3~4分ほどのショート動画で、あるビルの前の街頭モニターから、日に数回放映されます。モニターはJR摂津富田駅北口広場に面した一角にあります。

 

いわゆる「デジタルサイネージ」というもので、近辺の商店や地元イベントを紹介する映像などが流されているのですが、その合間にこの啓発動画を挟んでいただく格好になります。

 

人通りには比較的に恵まれているロケーションですが、行政などと何ら関係のない一有志による動画に、道行く人らがどれだけ目を留めてくれるか、どんな反応が生じるのか、全くの未知数でまさに期待と不安の入り混じる心境です。

 

今般、自転車というと、新型コロナウイルスの騒動で、利用拡大が期待されつつ利用者の振る舞いが懸念されているところです。でもとくにそうした状況なりが背景にあったわけではなく。この『とんだ駅前テレビ』を運営されておられる方も元より自転車のでたらめな利用状況を憂慮されており、その方と知り合ったことから、ふとこうした話が浮かんできたのでした。


プレゼン資料などを作っておられる方はきっとスグお気付きになるでしょうが、パワーポイントを使った動画です。

 

通行する方々に目を留めてもらう形のものなので、専門用語も条文引用なども極力控え、かつ親しみやすいビジュアルに努めましたが、どれだけ成功しているだろうか。

 

また、少しでも身近に捉えてもらえるようにと、画像は極力大阪北部で撮ったものにしています。一方、挿入した数々のイラストやBGMなど、今般利用可能なフリー素材を最大限活用させていただきました。ここに記して感謝いたします。

 

苦心したのは、対象の性質上、批判的な表現を避けねばならなかったこと。日頃から現状批判に余念のない当方のような者にとっては、自転車利用環境の現状に触れずに制作を進めることは何かと立ちはだかる壁のようなものでじつに閉口しました。  

 

というわけでブログを書くのすら骨が折れる当方にとって、動画制作はそれになお輪をかけた難作業。路側帯とか右左折など、まだ触れていないことも多々あり、それらを続編でカバーしたいところですがさしあたって制作の目途は立っておらず。残念ながら当方にはユーチューバーなどとても務まりそうにありません。

 

画像抜粋

当座は4本のコンテンツでのスタート 

 

放映用動画は YouTube にもアップしております↓(ただし画質が若干落とされるのが難点ですね)。

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