2018御堂筋社会実験メモ

 御堂筋の社会実験、なんとか見に行くことができました。

 


 大阪市随一のメインストリート、御堂筋の側道/緩速車線(以下「側道」とのみ表記)を歩行者と自転車用に用途転換するのに向けての社会実験です。


22日(月)まで行われていました(はずです)。

 

大阪市は、御堂筋の将来像として、この道路の全面的な歩道化を打ち出しています。

 

 御堂筋完成80周年記念事業推進委員会として「御堂筋将来ビジョン」をとりまとめました

 


 この側道を含めて全6車線からなる市内有数の幹線道路を全面的にカーフリー化しようとは、全くあっぱれな構想です。

 

ただしそれは2037年の御堂筋整備完成100周年を見据えたまだまだ先の構想で、当面はその前段階として(*)、この側道部分の転換を進めることになっています。転換は買い物や行楽、観光客の集まる「ミナミ」方面から進められるようです。

 

 *万博招致が叶ったならば、その開催年である2025年を目途に

 

 報道は社会実験については揃って「側道を閉鎖し...」と表現していましたが、車目線の滲む表現です。どこか一つくらい「側道を歩行者(や自転車)に解放し...」と伝えたメディアはなかったのか、小生の見落としでしょうか。

 

 

 週末だったせいか歩行者の数が断然多いですが、わざわざ側道の歩道拡張部へ降りて歩く人はなお少数派でした。歩道との連続性がない以上は限界があります。

 

 自転車の方は、係員が張り付いて整理していたので当然と言えば当然なのでしょうが、実施区間に限っては歩道部を通行する自転車はほとんど見られない様子。

 

  コーンは途中から設置されたようです(開始当初の報道には見られず)。コーンの位置は特に自転車をいじめるわけでなく、むしろ歩行エリア側に寄せて置かれています。 

 

 交通量調査が行われています。

 

 簡単に言えば、御堂筋側道の一時的な用途転換という内容の社会実験ですが、同時に千日前通(御堂筋にクロスする幹線)の部分的なレーン縮小もセットになっていることにも注目したいところです。

 交差点部で歩道を張り出させて歩行者の「溜まり」を広くすることは、同時に道路の横断距離を短くすることにもつながります。もっとも、見た限りでは歩行者にその意図は十分に伝わっておらず、従来通り縁石の前で信号を待っている様子でしたが。

 

 ちなみにこの辺りは車の二・三重駐車で有名なところですが、歩道の張り出しの控えの部分は、車にとっては格好の停車エリアとなるはずです。 

 

 千日前通を南へ渡って歩道へ乗り上げる箇所には段差解消のスロープが付けてあります。簡易ながらアスファルト施工だし、コーンの間の部分はガードレールを撤去してあります。やや控えめな表示ですが、グレーの破線で先行のモデル整備区間(自転車通行帯)に繋げらています。

 

  こちらがその先行整備区間、「モデル整備」地区(=千日前通以南)。相変わらず歩行者の侵入跋扈に晒されています。 

 

 

大阪市広報より切り出し、および方位を付加
大阪市広報より切り出し、および方位を付加

 

  社会実験はこの「モデル整備」区間と合わせて実施だったはずですが、とくに何かが行われているという様子ではなく、ハガキ形式のアンケートが配られていたのが、その代わりとでもいうものだったでしょうか。

  

 

 案内チラシには「モデル整備区間」については「検証実験」という呼称をあてて、千日前通以北のそれとは区別しています。やはりこのアンケートがその一部なのか、もしくは「検証実験」そのものなのか...

 

と思ったところがやはり後者のようで、ハガキの裏面をよく見ると、上端に小さく「南側区間後半(自転車)」との印字があり、図もモデル整備区間(つまり既に供用済)のそれになっています。 

 

強調加工済
強調加工済

  

 これでハガキを受け取ったひとは、千日前通以北の区間ではなく、供用済のモデル整備区間についてのアンケートなのだと間違わずに把握できるだろうか... との不安がよぎります。

 

 当のアンケートはマル付けするだけでも難儀する項目ぎゅう詰めのフォーマット。唯一の記述欄【問2】も幅5cmX1cmの、せいぜい名前が書けるほどのスペースです。

  予算と簡便さの両立を狙ったら結果こうなった、のかどうかわかりませんが、例えばQRコードでアンケートサイトへ誘導して、もっと余裕をもって答えてもらうような作りはできなかったか、などと思わないでもありません(といってもアクセスの公平性とか予算だとかハードルはあるでしょうね)。

 

 しかしアンケートの形式をさておいても気になるのは、その内容です。このアンケートでは側道の用途転換についての評価は得られても、既に整備された区間の課題を掘り下げるものにはなっていません。

 

整備区間の課題とは、先にも書いた、歩行者との分離が不十分で、自転車との錯綜が常態化していることです。

 

 

 大阪市は「市民の声」というWeb上の窓口で、 

 

 「難波から千日前にかけて、2年前に幅が広めの自転車専用道路が出来ましたが、全く意味なく、歩行者が歩いています。自転車専用道路として全く機能してないのが現実です」(抜粋)

 自転車専用道路について (2018.9.28)

  

 という市民の声に対し、課題を認めて改善に取り組む旨の返答をしています。

  

  今回の社会実験、千日前通から北の新規区間については、さしあたっては「モデル整備」区間のスペックを落とすような懸念は伺えなかったですが、現状の課題に対しては、やはりこんな調子で大丈夫だろうか、という不安が拭えません。

 

 そもそも大阪市は、御堂筋の脱車道化の取り組みのアナウンスでは、一貫して「歩道化」と言うのみで、自転車への空間配分を示す表現を避け続けています。

 

 ですがこの御堂筋の取り組みにおいて焦点になるのは、やはり自転車の取り扱いです。市のアナウンスは図らずもその懸念を浮き上がらせているかのようですし、それは、歩道化の提言作りを担った「御堂筋完成80周年記念事業推進委員会」の議事要旨からも伺うことができます。

 

引き続き注視してゆきたい御堂筋の動きです。